日本遺産「山寺と紅花」が認定されたのを機に、地域の有形・無形の文化財を核とした「地域ブランドづくり」と「持続可能な推進体制の構築」のため、2018年12月より地域プログラムとして山形アドビューロ様とタッグを組み事業を進めてきました。
2018年1月~3月は、山寺と紅花ワークショップを3回開催しました。山寺を基軸とした地域推進体制の方針づくりと、核となる人材を見出すことを目的に、構成市町の担当者や関係する団体の方々に参加頂き、ワークショップで実現したい未来像について検討を重ね、それをもとにビジョンを一枚絵に描き出す作業を行いました。
また、山寺と紅花シンポジウムを開催し、内外に「山寺と紅花」の日本遺産の取組みについて関心を持っていただけるよう取組みを行いました。
2019年度は、前年度で描いた、「実現したい状態の一枚絵」を実現するために、3つのワークグループ(WG)に分かれて具体化に向けた作業をおこないました。
①ガイド養成ワークグループ、②旅行商品造成ワークグループ、③まちづくりワークグループの3つです。それぞれ、DMO、DMC関係者、行政関係者等と地元山寺の方々に事務局より声掛けし、まずは、勉強会やスタディツアーで勉強するところからスタートしました。旅行商品WGではモニターツアーを実施するなど、各ワーキンググループでガイド組織のあり方や山形市都市計画課の交えてのまちづくりの検討、旅行商品の造成検討等を行いました。
<事業名>
日本遺産「山寺と紅花」体制構築及び情報発信業務
<委託元>
株式会社山形アドビューロ
「山寺と紅花」推進協議会(事務局:山形県教育庁文化財・生涯学習課)
<ゴールイメージ(ありたい未来)>
<やまがたの紅花を知るスタディツアー>
■日時:令和元年7月16日(火)
■行程
1. 山形市高瀬紅花ふれあいセンター
2. 天童市 じゃがらもがら(天童紅花まつり会場)
3. 河北町 河北町紅花資料館
4. 白鷹町 紅花の館
5. 米沢市 株式会社新田
紅花まつりの関係者は、他の紅花まつりをほとんど見たことがありません。そこで、各地の紅花まつりの終了直後に時期に、各々の会場を巡って主たる担当者の具体的なお話を聞くツアーとしました。そこで、各地域ごとの紅花への取組み状況や、その地域の歴史的背景、地域の事情など生々しい話を聞くことで、紅花について一気通貫で見られたことが大きな成果となりました。
①天童市の会場では大山るり子氏より紅花を活用したレシピの紹介や紅花のすり染め体験を、②白鷹町の紅花の館では白鷹紅の花を咲かせる会事務局長の今野正明氏よりご指導いただきながら、紅花摘みと紅餅づくり体験をしました。
また、③米沢市の株式会社新田では常務の新田克比古氏より、新田氏のご両親が山形技術専門校の鈴木孝男先生と研究を重ね苦労しながら紅花染めの技術を開発した経緯や紅花に関する豊富な知見を交えながら、滅多に見ることができない貴重な紅花染めの実演をしていただきました。
<合同勉強会「山寺」「紅花」鼎談>
■日時:令和元年8月29日(木)
■場所:山寺芭蕉記念館
第1部鼎談
■出演
清原 正田 氏(宝珠山立石寺住職、山寺観光協会会長)
新関 孝夫 氏(山寺観光ガイドきざはし会会長)
後藤 麻衣 氏(山寺ふもとや)
■コーディネーター
馬場 誠(株式会社アイサイト代表取締役)
冒頭、出演のお三方には、山寺と紅花が日本遺産に指定されたことを受けての感想をお話しいただきました。清原住職には仏教と色の関係やちょっとディープな仏教(密教系)の修行から紅花と山寺の関わりについてお話しいただきました。
きざはし会新関会長には、山寺地域が抱える課題やガイド事業での具体例をあげながら観光客の目を通して気づいた山寺の魅力についてお話し頂きました。後藤麻衣さん”峯の浦”など、まだ知られていない奥山寺の魅力について、外国人観光客へのガイド対応などの課題についてお話しいただきました。
第2部鼎談
■出演
今野 正明 氏(白鷹紅の花を咲かせる会事務局長)
長瀬 正美 氏(出羽もがみべにばなの会代表)
■聞き手
馬場 誠(株式会社アイサイト代表取締役)
山形の紅花栽培を代表するお二方にお越し頂きました。まずは、紅花栽培に取り組むきっかけについてお話いただきました。長瀬さんには、室町時代から江戸時代に「最上千駄」と呼ばれ、全国の生産量の半分以上を占めていた山形の紅花生産が、時代を経る中で化学染料の普及に伴って衰退し、戦争を機に途切れてしまった所からどのような経緯で復活してきたのかについて、千歳、貫津、高瀬地区の取組みの歴史などについて貴重なお話しをいただきました。今野さんには、紅花生産量日本一にするに至った経過について、紅花栽培の連作障害をどう解決するのかなど、示唆に富んだお話しを頂きました。
ゲストに米沢市の株式会社新田常務取締役新田克比古氏にもお話し頂き、どうやって山形県の紅花が復活したのかの物語をお話しいただきました。
<秋のとっておき「山寺と紅花」モニターツアー>
■日時:令和元年11月16日(土)
※当初10月12日に開催予定でしたが大型の台風19号の影響のため延期し開催
■ツアー内容
09:00 山形県庁玄関前 集合出発
山寺へバスで移動
09:25 山寺ふもとや到着~
09:30 山寺立石寺 根本中堂(清原住職説明)通訳帯同
10:00 山寺ガイドきざはし会ガイド1名、通訳1名
姥堂~四寸道~せみ塚、弥陀洞~仁王門
性相院・金乗院・中性院・華蔵院の4つの院
奥之院と大仏殿~修行の岩場
開山堂と五大堂 (100分かけて、かなり濃いご案内!!)
11:40 ふもとや到着(名物 さくらんぼソフトクリーム)
11:50 山形市内へバスで移動
12:20 やまがたまるごと館「紅の蔵」到着 <昼食>
山形舞子 お座敷遊び初級編講座(60分)
本紅点し体験とお買い物
紅の蔵 蔵座敷の見学(堀野支配人)
15:00 バスで移動
のし梅本舗佐藤屋で和菓子づくり体験
16:15 山形県庁玄関前 解散
山寺のガイド:きざはし会 富樫 昭 氏
通訳:清水 国明 氏
宝珠山立石寺根本中堂に参拝し、清原住職の案内で御本尊や不滅の宝灯などをご説明いただきました。山寺の石段1024段を通常の1.5倍の時間をかけて登ったため、丁寧な説明でゆっくり楽しめたと好評でした。
午後は山形市内に移動し紅花文化を感じるコースを設定。紅花商人ゆかりの蔵座敷で昼食をとり、その後、やまがた舞子の花笠踊りなどの日舞を賞し、舞子さん芸妓さんとお座敷遊びの初級編を楽しみました。日本の伝統的な遊びが体験できて外国人は大喜びでした。
女性だけの特典として、伊勢半本店の小町紅(15000円)を使用した本紅点し体験を行いました。芸妓さんに本紅を点してもらった方はうっとりするほど美しくなりました。
ツアーの最後は”のし梅本舗佐藤屋”の八代目社長 佐藤慎太郎さんに和菓子作りについて教わりながら、体験しました。和菓子の歴史をユーモアを交えてご説明いただき、楽しいひとときになりました。
<観光まちづくりワークグループ勉強会>
■日時:令和元年10月10日(木)
■場所:霞城セントラル23階 高度情報会議室
■講師:JTB総合研究所 山下 真輝 氏
歴史文化遺産を活かしたまちづくりと地域ブランドづくりを考えるをテーマに、JTB総合研究所首席研究員山下真輝氏をお招きしてご講演いただきました。
第1部は「なぜ観光に取り組むのか?」という問いかけから始まり、①国内における観光市場を取巻く環境の変化、②これからの観光政策の考え方、③DMOを核とした観光振興の考え方、④観光振興による地域ブランディング、⑤誰のために観光に取組むのか?の5つの視点からまちづくりを考えるうえで重要なポイントをお話しいただきました。
第2部では、長野県阿智村の地域ブランドづくりの成功事例をご紹介いただきました。日本一の星空と標高1400mまで登れるゴンドラを活用した星空ツアーを着地型プログラムにして、初年度6500人の観光客が訪れる大成功を収めました。次年度からは更に観光客が増え、徐々に地域の人や旅行会社などの協力を得ながら今では年間15万人が訪れるスターヴィレッジという地域ブラントにまで高めたストーリーをお話いただきました。山寺紅花を地域ブランドにしていくためのヒントが満載のお話でした。
<旅行商品ワーキンググループ>
■第1回 旅行商品WG 令和元年9月9日(月) 山寺芭蕉記念館
■第2回 旅行商品WG 令和元年10月18日(金) 山寺芭蕉記念館
■第3回 旅行商品WG 令和元年12月17日(火) 山形県庁会議室
構成文化財を有する市町の行政関係者や旅行会社、DMCなどが集まり、3回のワークグループを通じて山寺と紅花の魅力や構成文化財を活かした旅行商品づくりを行いました。 多言語対応のガイドと歩く山寺ツアーや紅花摘みや紅花染めなどが体験できるツアー、中山町の豪農の館で紅花体験をするツアーなど8つの着地型プラン(案)が造成されました。その中からいくつかのプランに絞って次年度に商品として販売できるよう関係する方々との調整を進めて参ります。
<ガイド育成ワーキンググループ>
■第1回 ガイド育成WG 令和元年9月20日(金) 山寺芭蕉記念館
■第2回 ガイド育成WG 令和元年11月1日(金) 山寺芭蕉記念館
地元ガイドきざはし会や行政関係者などが2回のワークグループを通して、インバウンド観光の現状やガイド育成についての課題を共有しながら2021年の東北DCに向けた受け入れ態勢を作るため、実現可能なガイド組織について具体的な案を検討しました。
<まちづくりワーキンググループ>
■第1回 まちづくりWG 令和元年11月7日(木) 山寺芭蕉記念館
■第2回 まちづくりWG 令和元年12月5日(木) 山寺芭蕉記念館
「どんな山寺の町並みだったら訪れたいか?」「どうしたら外国人観光客に訪れてもらえるのか?」など、山寺のまちづくりで実現したい状態を来訪者や地元目線で考えたりするワークグループ。観光、都市計画に関わる行政職員に、地元の方を交え2回のワークグループを通して話し合いました。山寺の地域性や門前商店会、観光協会の事情など、地域の課題が少しずつみえてきました。ぜひ、次年度につなげて解決していきたいものです。